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2009年12月22日

地球温暖化とセカンドライフ

Global temperatures
地球温暖化とセカンドライフ
(注)1.月平均気温平年差は月平均気温(陸域における地表付近の気温と海面水温の月平均気温)と平年値(1961年から1990年までの30年間の月平均気温)との差
   2.Climatic Research Unit資料より作成


気候変動枠組み条約第15 回締約国会議(COP15)は、大方の予想どおり、実質的な進展がないまま閉幕した。今回の会議は、2013年以降のポスト京都議定書の国際的枠組みを決める重要な会議であったが、先進国と途上国の主張は平行線を辿り、地球規模で温室効果ガス(GHG)を削減するという目論みは脆くも崩れ去った。

さきに、鳩山首相は日本が2020年までにGHGを90年比25%削減すると表明して世界の喝采を浴びたが、これは「日本が削減幅を増やしてくれれば、自国の削減幅が少なくて済む」という意味での歓迎に過ぎず、「自分で自分の首を絞めるバカなヤツ」との皮肉まじりの賞賛である。

エネルギー効率が極めて高い日本のGHG 排出量は、05年で全世界の3.5%を占めるに過ぎない。先進国が掲げた「2050年までに50%削減する」との目標を実現するためには、世界最大の排出国となった中国(18.6%)と、先進国最大の排出国である米国(18.0%)のリーダーシップが欠かせないが、両国政府の態度には「経済成長の制約要因とならない範囲内で」という姿勢が滲み出ている。

Global Greenhouse Gas Emissions
地球温暖化とセカンドライフ
(注)UNEP“Rethinking the Economic Recovery:A Global Green New Deal”09年4月より作成

オバマ大統領は環境対策に積極的と言われていたが、米国が示したGHGの 削減目標は05年比17%減である。この数字は90年比でほぼ横ばいに過ぎず、日本の25%減、EUの20~25%減と比べて、まるで意欲のない目標である(ただし、EUの場合も省エネが大きく遅れている中東欧地域を含めた目標であり、日本ほど意欲的な目標とは言えない)。

中国政府は2020 年までにGDP当たりCO₂排出量を05年比40~45%削減するとしている。この数字の意味するところは、「省エネは推進するが、CO₂削減なんてとんでもない」と言っているのと同じである。仮に、2010~20年の中国の実質GDP成長率が年率8%程度を維持するとすれば、GDP当たりCO₂排出量を 05年比40~45%削減できたとしても、20年時点の中国全体のCO₂排出量は05年比で2倍近い規模に達する計算となるからだ。ちなみに、90年比では約3倍の排出規模となる。

中国は途上国であり、より高い成長を維持する必要があることを考慮しても、中国のエネルギー効率は極端に悪い。例えば、07 年の中国のエネルギー原単位は0.75トン/千ドルであり、世界平均の0.30トン/千ドル、日本の0.10トン/千ドルをはるかに上回っている。中国が日本と同じモノを作るのに7.5倍ものエネルギーを必要とする現状が異常なのであり、貴重なエネルギー資源の暴飲暴食は世界人類に多大な損失をもたらしていることを自覚すべきである。

米国でも省エネ余地はまだまだ大きく、米中両国がその気になれば、世界経済を停滞させることなく、GHGの大幅削減が実現できる可能性は大きい。

TPES/GDP
地球温暖化とセカンドライフ
注1.エネルギー原単位=エネルギー消費量÷GDP
  2.IEA“Key World Egergy Statistics 2009”より作成


京都議定書を端緒とするGHG 削減は地球温暖化を防止することを目指したものであるが、もう1つの重要な戦略的課題であるエネルギー安全保障の観点から、もっと議論を深めるべきであろう。つまり、近い将来、世界の原油生産量がピークアウトすると予想されるなか、主要国が考慮すべきは、膨大な埋蔵量を有する中東、中南米などOPEC諸国に、経済の生命線とも言えるエネルギー源を支配されるリスクをいかに回避するか、である。

実際、オバマ大統領はその就任演説のなかで「我々のエネルギーの利用方法が、我々の敵をますます強大にし、地球を脅かすことになる」と述べている。エネルギー安全保障の問題は、日米欧の西側先進国だけでなく、中国やロシアなどにとっても重要である。こうした地政学的リスクを共有した上で、ポスト京都議定書を議論するならば、新しい展望が開けてくるかも知れない。

いずれにせよ、環境・エネルギービジネスが21 世紀の基幹産業として成長してくる可能性が高まっていることは、総じてみれば日本の産業界にとって好ましいことである。IEAによれば、2030年の GHG濃度を450ppmに抑制する、つまり地球の気温上昇を産業革命前比2℃前後に抑制するためには10~30年の20年間で総額10.5兆ドル(08 年価格:約945兆円)の環境・エネルギー関連投資が必要と試算している。

うち、運輸部門は45.2%を占めると見込まれているが、その中心はハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車、電気自動車などエコカーの普及であり、日本メーカーはこれら分野で世界の最先端を走っている。建築部門(家庭部門)でも、省エネ家電の開発では日本メーカーが激しい競争を繰り広げており、その技術力は世界が注目している。日本の技術優位性は、原子力、太陽光パネル、風力発電装置の分野でも世界の先端にある。

World Investment for Sustainable Energy
地球温暖化とセカンドライフ
(注)IEA“HOW THE ENERGY SECTOR CAN DELIVER ON A CLIMATE AGREEMENT IN COPENHAGEN”09年10月より作成

環境・エネルギー分野で、日本の産業界が将来も世界の先端にあり続けるためには政府の政策誘導も欠かせない要素である。また、GHG 削減は鉄鋼業界などエネルギー多消費型産業に大きな負担を強いることにもなるため、これら産業への支援も必要である。鳩山首相の示した「25%削減目標」は先走ったピエロではあるが、それを実現するための確固としたアクションプログラムを用意することができれば、日本経済を再び活性化する起爆剤になり得る可能性を秘めている。

特に、日本政府が配慮すべきは、環境・エネルギー分野におけるIT技術の応用であろう。例えば、次世代電力網「スマートグリッド」の研究開発と整備などが代表的なものである。「スマートグリッド」とは、IT技術や蓄電池の導入によって、発電所による集中型電源と太陽光発電などによる分散型発電の効率的利用を実現するものである。

すでに、米国のオバマ政権は「スマートグリッド」を含む送配電投資に110億ドルの予算をとり、この分野で世界をリードする戦略を採っている。米国では電力事業者だけでなく、家電、IT、自動車などの様々な業種が事業参入を表明しており、この分野だけでも世界需要は膨大になると考えられている。

このほか、省電力・低発熱型のサーバーの製品化などハードの開発や、バーチャル会議などネットワークインフラの利用によるGHG削減も視野に置く必要がある。バーチャル会議ではSLも有望なインフラの1つと考えられるが、日本でもこの分野で独自の技術を有した、ビジネスユースに堪え得るプラットホーム開発を検討する余地もあろう。

Virtual Meetings for Real Businesses
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