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2008年08月30日

SL経済は好調???

SL経済は好調???

足元、日米欧の先進国経済は米国を中心にリセッションに陥る瀬戸際にある。

07年夏以降のサブプライム住宅ローン問題の深刻化によって、世界の金融資本市場の混乱が続き、欧米では中小金融機関の破綻や銀行の貸し渋りが表面化し、それが企業の資金調達難をもたらしている。加えて、原油や穀物など資源価格の高騰がインフレ圧力を高め、消費者物価の上昇を通じて消費マインドに悪影響を与えている。

反面、インワールド経済は順調な拡大を続けており、リアル経済低迷の悪影響をほとんど受けていないようである。リンデンラボが発表したSL統計によれば、7月は61,136のアバターが支出以上の収入を得たとされる(前月比5.7%増)。7月のユーザー間取引は84.5億L$に達し、6月の78.8億L$から7.3%増加した。また、ユーザーの総接続時間は、3,470万時間と過去最高を記録した。

●総接続時間の推移
SL経済は好調???

土地の利用状況をみると、7月の総面積は17.1億平方メートルと、6月の15.8億平方メートルから8.7%増加した。リンデンラボは需給悪化からメインランドの供給を抑制しており、5~7月は2.2億平方メートルで横ばいとなっているが、プライベート・アイランドは14.9億平方メートル、前月比10.0%増となった。

これは、4月のSIM販売価格の引下げとそれに伴う既存不動産の価格暴落によって、従来、不動産を持たなかったユーザーの不動産購入意欲が高まった結果である。その意味で、リンデンラボの戦略は、目論見どおりの成果をあげたと言える。なお、リンデンラボはメインランドの美化と区画整理を通じて、同地域の需要喚起を図る方針を打ち出している。

●土地面積の推移
SL経済は好調???

このように、リンデンラボが発表するお手盛り統計をみていると、インワールド経済は好調で、明るい将来が待っているように思えるが、これらの統計が正確な経済実態を反映しているとは言い難い。

例えば、7月は61,136のアバターが純利益を得たとされるが、L$をまったく購入せず、CAMP生活だけでSLを楽しんでいるユーザーもこれに計上されているはずであり、1アバター当たりの純利益は恐らく微々たるものである。

本来であれば、純利益を得たアバターの数ではなく、純利益の規模の増減をみるべきである。ただ、SLで商売に従事しているユーザーでも、売上高から地代や製造コスト、宣伝費を差し引いた純利益は、少数の人気クリエーターを除けば、良くて収支均衡といった状況ではないだろうか。このため、リンデンラボは利益総額を統計として発表する気にはなれないのであろう。

ユーザーの総接続時間が増加を続けている背景には、モノ作りやサービスに従事するヘビー・ユーザーが増えていることもあるが、それ以上に複数のアカウントの利用拡大が進んでいることがある、と言われている。主体となるアカウント(本アカ)でSLを楽しみ、別アカウント(別アカ)でCAMPする方法は、PCの能力が許すのであれば、ある意味合理的行動である。

SL経済は好調???

ユーザー間取引の拡大も、別アカがCAMPで得たL$を本アカへ移す内部取引の増加が一因ではないかと考えられる。取引の中心は、地価の下落によって活発化した土地取引であろうが、これは従来の土地保有者の犠牲のもとに成り立っていることを軽視すべきではない。

現在は地価の下落により、土地の潜在需要が顕在化しているが、こうしたブームは一時的であろう。ブームが一巡すれば、リンデンラボは再び土地の値下げに踏み切るのであろうか?仮に、こうした手法が繰り返し行われるなら、ユーザーの減少に歯止めがかからなくなるのは明らかである。

実際、7月のプレミアム・アカウント数は86,457人となり、過去最高を記録した昨年6月の94,607人から8,150人、8.6%減少している。プライベート・アイランドの増加もあって、プレミアム・アカウントを取得するメリットが薄れていることもあるが、銀行閉鎖や地価の下落に伴う損失でSLから退出する人も多いのではないかと想像される。

言うまでもないが、プレミアム・アカウント数は、前月末のアカウント数+当該月の新規取得者数-当該月の解約者数で算出されている。つまり、この数字が減少することは、見かけ以上にSLからの退出の流れが急であることを示唆している可能性が高い。

●プレミアム・アカウント数の推移
SL経済は好調???

経済会計分析に従えば、経済成長は、資本投入量の変化、労働投入量の変化、および技術進歩や効率性の向上などを含む総要素生産性(TFP)の変化、によってもたされる。

SLで言えば、資本投入量はドル、円、ユーロからリンデンドルへ交換されるニューマネーの投入量の変化と考えればわかり易い。労働投入量は、SLのユーザー数の変化と捉えることが可能である。TFPは、SLのユーザー・インターフェースの改善などによる時間効率の向上と置き換えていいであろう。

翻って、SLの現状をみれば、資本投入量は引き続き増加しているものの、前述のように労働投入量は減少している可能性が高く、これが経済成長を阻害する最大のネックとなっている。加えて、インターフェイスにも際立った向上がみられない状況では、昨年までのような高成長は望むべくもない。SL経済の潜在成長力が急激に低下している、と言い換えてもいい。

リンデンラボは、バーチャル・ワールドの創成という偉業を果たした。しかし、インワールドを成長させるためには、創成期とは異なる発想やマネージメント能力が求められる。いまのリンデンラボにその能力があるかと言えば、その答えはNOである。

おそらく、今後数年以内に、リンデンラボの偉業を踏み台として、本格的なバーチャル・ワールド時代を築く会社がでてくると思われる。それが、Livelyで名乗りをあげたGoogleなのか、HOMEの開発を進めるSONYなのか、あるいはまったく別の会社なのかはわからない。

●PlayStation(R)Home
SL経済は好調???

SLのユーザーにとって、いまは、来るべき本格的バーチャル・ワールド時代に備えて、それに関する技術と見識を磨くときである。本格的バーチャル・ワールド時代が到来し、それが爆発的な広がりをみせる過程では、インワールドの先駆者として、いまSLに参加している日本人のなかからも、巨額な富を手にする事業家が数多く輩出されるだろう。


◎参考文献
Reuters/Second Life“Second Life’s user economy shows strong growth”2008年8月27日付

Second Life“KEY METRICS 2008.07.”(エクセルファイル)


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